今年最初の読了

微生物ってなに?―もっと知ろう!身近な生命

微生物ってなに?―もっと知ろう!身近な生命

高校・大学生向けに書かれた本なので平易で読みやすかったです。しかし、専門的なこともしっかりと書かれていて、非常に勉強になりました。

  • 微生物の大きさにははっきりとした定義はなく、ほぼ1ミリメートル以下で肉眼ではほとんど見ることのできない生物が、一般的に「微生物」と呼ばれている。
  • 細菌分類学のバイブル「Begey's Manual of Systematic Bacteriology」の新版(2001)には真正細菌は23の門が記載されている。子細菌は2つの門が記載されている(ただし、2002年に3つめの門が発見された)。真菌は4つの門がある。
  • 放線菌…抗生物質を生産する菌が多い。
  • 原核生物だけに効く抗生物質が多く発見されている細菌による感染症と比べると真菌症の治療は困難である(真菌は人間と同じ真核生物だから)。
  • 生物は細胞内にDNAとRNAの両方の核酸が存在するが、ウイルスには基本的にはどちらか片方だけしかない。
  • 外洋や貧栄養湖沼では「ピコ植物プランクトン(0.5-2μm)」が重要な一次生産者である。外洋では、全植物プランクトンの生物量あるいは光合成量の90%以上をピコ植物プランクトンが占めている。
  • 水域が富栄養化して出現する植物プランクトンは大型のものが多く、動物プランクトンにとっては食べにくい存在であり(口よりも大きなものは食べられない)、さらに、富栄養化した水域で大増殖する植物プランクトンの中には、動物プランクトンにとって毒となる物質を生産する種類もいる。
  • 植物プランクトン光合成の途中で不要になった有機物を体外に放出する。これは、海洋や湖沼では光合成に必要な炭素は二酸化炭素ガスや重炭酸イオンなどとして十分な量を得られることができるのに対して、植物プランクトンが増殖に必要な量の窒素やりんは不足することが多く、この結果、取り込みすぎた炭素が余ってしまうためと考えられている。
  • 動物プランクトンが豊富に存在していても、大量の動物プランクトンの生存を支える植物プランクトンが少ない場合がある。この場合には、鞭毛虫や繊毛虫などの原生生物が動物プランクトンの餌として重要なのかもしれない。
  • 生食連鎖を通じた炭素循環と、微生物ループを通じた炭素循環のどちらが自然界における重要な有機物の流通経路なのか、現在も多くの研究が進められている。
  • 硝酸は水に溶けやすく、アンモニアに比べて土壌粒子にくっつきにくいため、雨水や地下水などによって陸から川、そして海へと輸送される。このため、海洋には硝酸が多量に存在しており、階層や植物プランクトンなどの重要な窒素源となる。
  • 一酸化二窒素もガスとして存在し、大気中にも微量存在しているが、近年急激に増加していることがわかってきた。一酸化二窒素は脱窒の過程で生成されるが、強力な温暖化ガスであり、同時にオゾン層破壊ガスでもあり、地球環境問題を考える上で見過ごせない物質である。
  • アナモックス菌…アンモニア亜硝酸で参加してエネルギーを得るユニークな代謝を行う。この細菌はエネルギーを取り出す過程で窒素ガスと水しか生成しないため、究極の窒素除去システムと考えられる(培養が困難)。河川や海洋などに普遍的に生存しているという証拠が相次いで見つかっている。
  • 植物の根からは、糖・アミノ酸・ビタミン類などの栄養物が分泌されるため、それらを求めて多くの微生物が集まる。集まった微生物は、植物から栄養物の提供を受ける見返りとして、土壌中の窒素やリン酸などを植物に供給し、相互に利益を得る共生関係を築いている。
  • エンドファイト…生きている植物体の組織や細胞内で生活する微生物のこと。根粒細菌や菌根菌も広い意味では、エンドファイトに含まれる。エンドファイトは化学農薬のように病原菌に直接作用し、増殖をストップさせることはないが、病原菌よりも先に植物に住み着くことで植物を守るようである。
  • 微細藻類へのウイルス感染は、宿主に対する特異性が高い。
  • 生態系の上位にある動物などが下位にある小動物や植物を食べる場合のエネルギー効率は10%程度と科学的に実証されている。そのため、生態系を構成する生物の個体数や生物量などは、1つ下位の約1/10になり、相対的な関係を三角形で表すことができる。